ない。ない。
 印刷した記事を保管するのに使う青いホチキスをなくし、代わりの白いホチキスが翌日、見当たらなくなった。今も捜している。
 職場の本社6階には報道部デスク席や整理部、スポーツ部などが入る。掲載メニューの調整や予定外の出稿の伝達、図や表の作成依頼などでフロアを歩き回る。同時並行の作業中、どこかで手放してしまった。
 社会面を担当して3年目。慌て者がアラフィフになり、おっさん化が進む。とはいえ紙面のミスにつながったらまずい。再発防止に向け、同僚の男性デスクと失態を知らせ合うようにした。恥ずかしい出来事をあえて伝えることで注意力が増すと考え、「おっさんグランプリ」と名付けた。
 文書の裏面ファクス送信、資料のコピー機置き忘れ…。情けない「競争」はこちらが大きくリードしている。でも程よい緊張感が生まれたおかげか、物が消えることはなくなった。
 行方の分からない二つのホチキス。居場所を忘れても初心は忘れるなという戒めのメッセージだと都合良く解釈している。「まずはちゃんと捜せ」とのツッコミが聞こえてきそうだ。
(報道部次長 沼田雅佳)