東京電力福島第1原発事故で福島県浪江町から避難した大堀相馬焼の「陶吉郎窯」が4月末、いわき市四倉町に新工房を構え、再出発した。ギャラリーの奥の部屋には、窯の新作と印象の異なる古い焼き物が飾られ、異彩を放っている。
 有名な「二重焼」が登場する前、江戸時代以降の素朴な土瓶など十数点。初代が約250年前に作った魚文の角皿や、馬を描いた2代目の抹茶わんもある。時代に合わせ変化してきた産地の歴史を感じ取れる。
 浪江の工房で木箱にしまっていたため、東日本大震災の被害を免れた。今回は壊れるリスクも承知で飾ることにした。窯元の近藤学さん(64)の思いがある。
 「これだけの歴史を背負っていることを知ってもらいたい。縁もゆかりもない地。浪江では殿様でもここではどこの馬の骨だから」
 新しい土地で受け入れてもらえるのか-。不安を抱える原発事故の避難者は近藤さんに限らない。
 新工房は、多くのお客さんが連日訪れ、滑り出しは順調。市側には観光施設としての期待もある。伝統の継承と新しい歴史の創造。ギャラリーの奥で名品たちが行方を渋く見守る。
(いわき支局長 佐藤崇)