年のせいか、最近とっさの反応が鈍くなった。「危ないから」と家族から心配され、たまに通勤で使っていたオートバイを手放す羽目に。風を切って走るのに絶好の季節だというのに情けない次第。
 変に生暖かい風が体にまとわり付くような季節になると、オートバイの爽快感が懐かしくなる。
 付き合いは長い。16歳の誕生日を待ってすぐ、原付き免許を取った。当時、ちまたに流れていたのが尾崎豊の『15の夜』。不良を気取るほどの根性もなく、歌詞を胸にしまい込みながら当てもなく走り回った。
 かつて写真部に「バイク隊」が結成されたことがあった。地震や事故の時に出勤するためだった。ライダー5、6人で緊急事態に備えたつもりだったが、メンバーの高齢化や異動などもあって、いつの間にやら忘れられ消滅した。
 一度だけ、たった1人のバイク隊を組織してあてどなく走った。東日本大震災直後の被災地。あまりの様子に圧倒され、「ここを走っていいのか」と自らに問い掛けるしかなかった。
 あの日受けた風の記憶。バイクにさよならしても決して忘れられない。
(写真部次長 長南康一)