東日本大震災で亡くなった人々の月命日を前に、岩手県警による残念な事実隠しが露見した。震災犠牲者の遺体取り違えだ。いまだ正式発表もない。
 てっきり、これで9件目のミスと思ったら、実は10件目だという。今回明らかになったケースのほかに、内緒にしていた遺体の取り違えが、もう1件あった。
 県警は「遺族が公表を望んでいない」と説明するが、どう耳を澄ましても責任転嫁としか聞こえない。
 遺族が「公表を望んでいない」のは「亡くなった身内に関する個人情報」だろう。「取り違えがあった事実」を公表するのは警察の責任範囲だ。県警は遺族の意思を誤認、あるいは「意図的に」誤認している。
 死者・行方不明者1万8000人超という未曽有の災禍を経験した私たち現役世代には、事実を記録する責務がある。被災地から震災の痕跡が消え去ったとしても記録さえ残っていれば、必ず次世代が役立ててくれる。そう信じている。
 震災から7年7カ月。月命日の前後に欠かさず浜で懸命の捜索を続けてきたのも岩手県警だった。人の命と向き合う姿勢が、どこかちぐはぐではないか。
(盛岡総局長 矢野奨)