石巻地方の中学校に顔を出す機会が度々ある。体育館や校長室に飾られた校歌の歌詞を読むのが、楽しみの一つだ。恵みの海をたたえる言葉は土地と海の深いつながりを教えてくれる。
 牡鹿半島の先端近くにある石巻市牡鹿中(生徒30人)の校歌は「水平線から吹き寄せる風」で始まる。校舎から太平洋が望め、「八重の海原 世界を結び」という描写を実感できる。
 同校は統合により2010年4月に誕生した。初めての卒業式は東日本大震災の翌日に予定されていた。「希望あふれる 黎明(れいめい)の」「黒潮の波 海幸多く」。当日、会場に響くはずだった歌声は聞かれなかった。
 あれから7年8カ月。「自分たちは震災の記憶を伝えられる最後の世代です」。そう語る中学生と何人か出会った。どの子も震災の記憶を抱えつつ古里への思いを口にした。その姿は牡鹿中校歌にある「凜(りん)と建つ」という歌詞と重なる。
 郷土の誇りを刻む校歌の数々が、今日も海の子を鼓舞している-。こう書いていて、ふと母校の校歌がよみがえってきた。「見よ大空に聳(そび)え立つ 杉の大樹のその蒼(あお)さ」。時を超えた応援歌のような気がした。
(石巻総局長 今里直樹)