浜は大変な騒ぎになる。一報を聞いて直感した。宮城県が養殖漁業に民間参入を促す「水産復興特区」なるものを検討しているという。石巻で勤務していた2011年5月。県政キャップから連絡があった。「あすの朝刊に載る」という。
 特区は、地元漁協に優先配分される漁業権を一定の条件下で民間に開放する。企業の活力で浜を復興させるという触れ込みだった。漁業者側には生活の糧である漁場を奪われる恐れがあると映った。
 漁師の多くが家族や仲間を失った。家も船も漁具も流された。現場から積み上がったまっとうな策には見えなかった。「創造的復興」の目玉にしようというお上の思惑は想像できた。
 説明会などは常に大荒れ。疲弊しきった浜が猛反発するのは当然だった。特区は石巻の一つの浜に適用されたが、8月の連載記事でも指摘された通り、混乱とつぎ込まれた公費に比して成果は上がっているとは到底、言い難い。
 政府は70年ぶりの漁業法改正で特区と同趣旨の漁業権の民間開放を計画する。現場の声を丁寧に拾った仕組みでなければ、持続可能な漁業など不可能だ。
(整理部次長 大友庸一)