気仙沼に赴任した今春、リアス・アーク美術館で見覚えあるタッチに「再会」した。画家で元美術教師、浅井元義先生のオイルパステル画だ。
 初任地が浅井先生の故郷・石巻だった。石巻の古い街並みを描いた作品群は、当時から印象深い。線描は迷いなく強くも、繊細で洒脱(しゃだつ)。初めて会った際、がっしりした体格ときさくな人柄そのものだと思った。
 美術館に並ぶのは、老舗の酒蔵、石造りの洋館など昭和の気仙沼の風景33点。石巻高の後輩でもある山内宏泰副館長(47)によると、本人から「館に作品を預けたい」と提案されたという。震災で失われた建物が大半で、山内さんは「今や貴重な作品」と語る。
 数点は、震災前の石巻のスケッチを集めた「ふるさと石巻・思い出の風景たち」(2012年)に収められた。あとがきにある。「あと十年生き延びて、次作は三陸海岸」。だが、10月に80歳で逝った。
 今、海には防潮堤がそびえ立つ。復興の新しい街はどこか無機質だ。「風景がやせていく」と山内さん。
 未来の三陸の海と街に、浅井先生は描くべき何を見いだしただろう。
(気仙沼総局長 村上朋弘)