盛岡「市」とは名ばかりの限界集落に住んでいる。はた目には消滅間近だが、この土地のお年寄りたちはとにかく元気だ。
 資源ごみ収集車と張り合って空き缶や空き瓶、古新聞を集め、業者に売りさばいて軍資金を調達。公民館を根城に歌の会やマージャン、卓球、グラウンドゴルフの各種同好会と日々多彩な活動を繰り広げている。
 中に「自分にご褒美を上げる会」というのがあって気になっていた。2カ月に1度、路線バスに乗ってみんなで山を下りる。街場に繰り出して一杯引っかける、ただそれだけの会だ。
 2カ月に1度なのは、この日が年金振込日だから。楽しそうなのでご相伴にあずかりたいが「若い人は汗をかいてよ」と軽くいなされ、かくして町内会の世話役を仰せ付かった。
 今日は新年交賀会と称し、やはり公民館で一杯やるそうだ。「交ぜてやる」と声を掛けてもらい、いそいそ出掛けることにした。
 隣近所とあいさつを交わして世間話をするなど、仙台にいた頃はついぞなかった。若造扱いも悪くない。新成人が一人もいない寂れた町で、地域社会の一員になる喜びを初めて知った。
(盛岡総局長 矢野奨)