新春恒例の各種スポーツ全国大会の試合をテレビ観戦しているとき、「ああ、誤った表現だ」と思わず声に出してしまった。試合開始と同時にアナウンサーが一言、「戦いの火ぶたが切って落とされました」。
 ほぼ同じ意味で使われる「火ぶたを切る」と「幕を切って落とす」とを混用したようだ。「火ぶたを切る」の語源は火縄銃の扱い方にある。火ぶたを開けて点火、発砲の準備をしたことから、転じて競技や戦いを始めるという意味で使われるようになった。
 この間違い、記者が携帯する用字用語ハンドブックの「誤りやすい語句」にも事例として載っている。「汚名返上」と「名誉挽回」とを混同した「汚名挽回」は、よく似たケース。出版・印刷物に時折、「至上命令」が「至上命題」と誤って表記されている場合もある。字面が似ているので、誤用を見逃してしまいそうな言葉遣いだ。
 生中継で臨場感を醸すアナウンサーとは異なり、記者やデスクは原稿を仕上げるまでに確認、点検作業ができる。新聞は文字として残るだけに、なおのこと気を引き締めて推敲(すいこう)を重ねたいと思っている。
(報道部次長 末永秀明)