恥ずかしながら「恩送り」という言葉を最近知った。東日本大震災の直後に取材班がお世話になった登米市の飲食店主と再会し、その人が口にしていた。
 人から受けた恩に報いる「恩返し」とは異なる。作家の故井上ひさしさんは著書『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』で「恩送り」の意味を次のように書いている。
 <誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送る。その送られた人がさらに別の人に渡す。そうして、「恩」が世の中をぐるぐるぐるぐる回っていく。そういうものなのですね>
 東日本大震災の被災地を思い浮かべた。全国、世界の人たちから物心両面で多大な支援を受けた。被災地の人たちはこの8年間、受けた恩を別の人に送りながら、少しずつ地域を再生してきたのだと思う。ぐるぐるぐるぐると。
 わが身を振り返る。さまざま書き散らしてきた記者生活。お世話になった人たちの顔が脳裏に浮かぶ。もう亡くなった人もいる。恩返しはできないが、せめて誰かに恩送りできないかと、ぐるぐるぐるぐる、考えている。
(報道部長代理 山野公寛)