仕事柄、いろんな著名人に会っている。先月12日に亡くなった、仙台市出身の哲学者梅原猛さんにも1度お目に掛かった。
 1995年の暮れだったと思う。同僚と2人、それぞれの取材テーマを持って京都の国際日本文化研究センターを訪ねた。立派な応接室に通されたが、梅原さんは現れない。執務室とおぼしき奥の部屋から、何やら事務的なやりとりの声が聞こえる。
 たっぷり2時間は待たされた。ソファに座った梅原さんは無言で、明らかに不機嫌そう。外した腕時計を両手でもてあそび、「時間がない」と言わんばかり。
 日本曹洞宗の開祖道元と宮沢賢治の思想的共通性について尋ねた。「2人が似ている? どういうところが?」と、逆に質問された。思うところを述べると、梅原さんの表情がぱっと変わった。目をきらきらさせ、「なるほど、似ています。似ています」と愉快そうに繰り返した。その後はご機嫌うるわしく、取材はスムーズに進んだ。
 世俗のことは苦手だが、知的関心事には時間を忘れる。そんな「学究」の印象が刻まれた。
(整理部次長 野村哲郎)