これが世論調査なら、こんなふうには思わなかった。新聞を読んで自分の考えを持ってほしい、と毒づいていたかもしれない。
 米軍普天間飛行場の移設に絡み、辺野古沿岸部埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票があった。
 大勢に影響しないと知りながら、わざわざ投票所まで足を運ぶ労をいとわず「どちらでもない」と意思表示した人が5万人以上。その心奥には何があるか。
 重なって見えたのは、原発事故に遭い、子どもの手を引いて古里を逃れた知人だった。「帰還しますか、しませんか」と迫る二者択一に知人は、押し黙る選択しかできなかった。
 無言の抗議は黙殺され「勝手に古里を離れている人」の烙印(らくいん)が押された。
 18年前には、プルサーマル計画導入の賛否を問う新潟県刈羽村の住民投票で「保留」票を賛否両派が自らに都合良く解釈する事態が起きた。民主主義の表決は、どうやら第3の選択を許さないらしい。
 世界一危険な飛行場をなくすには、美しいサンゴの海を埋め立てるしかないというのは本当か。本土で暮らす私たちは、自分の考えを持っているだろうか。
(盛岡総局長 矢野奨)