「招待されちゃいました」。福島県内の支局記者の声は電話口で明らかに弾んでいた。県内のある小学校で開かれる「感謝の会」に地域住民に交じって呼ばれたという。
 小学校は東京電力福島第1原発事故の被災地にある。昨年春に避難先から戻って地元で授業を再開した。記者は頻繁に取材に通い、通常のニュースとして取り上げたり、連載にするなどしてきた。
 取材開始から間もなく1年。子どもたちにとっても顔なじみの存在になったのだろう。記者と取材相手という枠にとどまらない関係を築けたのだとしたら頼もしい限りだ。
 「地域の人たちと同じ空気を吸って一緒に泣いたり笑ったりする。それが地元紙の記者ってもんだ」「うちは東北の地元紙なんだ」と、偉そうなことを若手記者に言ってきた。
 待てよ。自分はどうだろうか。福島総局に赴任して丸3年。広い福島県内の空気をどれだけ吸い込めたのか。あっちもこっちも行っていない所ばかり。泣いたり笑ったりは…。浮かぶのは杯を酌み交わしている記憶ばかり。まずい。初心に帰る必要がありそうだ。
(福島総局長 安野賢吾)