中学の頃だから四十数年前。学校で「馬乗り」という遊びがはやった。一組6、7人で、一方がラグビーのスクラムを一列にしたような「馬」を作り、もう一方が馬に飛び乗ってつぶしにかかる。危ないので禁止されていたが、こっそりとやっていた。
 ある日、音楽室で遊んでいたら、担任の先生が鬼の形相で乗り込んできて「全員、教壇の前に並べ」と命じ、全員の頬にビンタを食らわせた。
 手を上げる前に先生は「駅伝大会でよく頑張ったのに、なんだこのざまは」「野球部のエースが恥ずかしくないのか」と一人一人を叱咤(しった)した。1クラス45人の時代、先生は生徒のことを本当によく知っていた。
 先生が去った後、誰かがぽつりと言った。「俺たちも痛かったけど、十数人ビンタした先生の手も痛かったろうな」。皆、うなだれた。
 いじめや体罰、児童虐待が連日のように報道される。記事を読むと、いきさつは理不尽で無慈悲なものばかり。昔話をして体罰や暴力を擁護するわけではないが、情緒はあったと思う。情のない仕打ちは憎悪や恐怖を生み、人を追い詰める。(整理部次長 山内一也)