2万人以上の犠牲者を出した東日本大震災から8年-。こんな書き出しの原稿を後輩から受け取った際に一瞬、声を荒らげそうになった。
 一人一人に愛する家族がいた。仕事や学校など当たり前の生活があった。夢や希望もあったはずだ。そもそも命に端数があるはずもない。
 警察庁などによると、震災8年の時点で死者は1万5897人、行方不明者は2533人、関連死は3701人。計2万2131人の命が奪われたのが東日本大震災の被害の実態だ。
 3.11の節目の記事だっただけに、犠牲者の数を「約」や「以上」などで「丸める」わけにはいかない。死者、行方不明者、関連死を含む合計の数字を入れて記事をリライトした。
 震災取材を長く続けてきた私たちは、日々、更新される犠牲者の数を圧倒的な無力感を抱きつつ記事にしてきた。いつしか「約」や「以上」に慣れ切ってしまってはいなかったか。
 後輩には、被災地の地元紙として命を「約」や「以上」で表現するのは控えようと伝えた。自分もおそらく同じ過ちを犯してきた。だから叱れなかった。
(報道部次長 山崎敦)