平成となったばかりの1989年春、大学は卒業したものの職に就けず、浪人の身だった。世はバブル経済に浮かれていた。
 時代からこぼれ落ちたような焦燥感、将来への不安を抱えながら、小さな書店でアルバイトをする日々だった。そんなとき、励まされた本がある。
 共同通信記者でジャーナリストだった斎藤茂男さんの『夢追い人よ』(築地書館)。自ら携わった事件の舞台裏を膨大な取材ノートから明かす一方、記者を目指す若者たちにエールを送っている。
 「生き方のスタイルはどうでも構わないけれども、心の底の底にいつも正義を愛する熱い火を燃やしつづけている人がいい」「自分は弱いものの味方だぞ、といった単純素朴で結構だ」
 学歴や見掛けじゃない、要はハートが大事だと勝手に解釈し、気持ちを奮い立たせたことがある。大切な一冊として、30年たった今も手放せない。
 先日、新入社員の研修で話す機会があった。それぞれ、記者を志した思いがあるに違いない。その灯を消さず、新たな令和の時代をつくってほしい、と思う。夢追い人のように-。(論説委員 古関良行)