3月10日、「とうてつ駅そば、最後の一杯」という他社の記事に嘆息した。八戸支局への取材手配をすっかり忘れていたからだ。

 十和田観光電鉄(十鉄(とうてつ))の旧三沢駅舎内で50年以上続く食堂が、現在地での営業を終えて仮店舗に移転した。駅前整備事業に伴う駅舎解体のためだ。すりガラス格子戸と木札メニュー、店舗前の木製の長椅子、煙突ストーブ。昭和の雰囲気と素朴な味が人気だった。

 旧駅舎は1959年に落成。64年に「観光センター」として増改築され、レストランや喫茶店、すし屋も入居したという。2012年の十和田と三沢を結ぶ鉄路廃線後、バス案内所と待合室、食堂だけが残った。

 人々が交差する「駅」は独特な場所だと思う。出発と別離の記憶は鮮明で時には琴線にも触れる。店員と客の表情を紙面で紹介したかった。八戸支局のN記者も「突然の法事で故郷の金沢に帰省中だった。日程が重なり残念」と悔やんだ。

 JR青森駅舎も同じ1959年の落成だ。解体が決まり、2020年度末には新駅舎ができる。NPO有志が「青森駅舎の還暦祝い」を計画。5月、花と感謝のメッセージが駅前を彩る。
(青森総局長 長内直己)