その桜の開花を毎年、楽しみにしていた。植樹の由来を知ったのは、移植か伐採かという仙台市の動きを伝える宮城県版(4月10日)の記事でだった。
 広瀬川に架かり、仙台市若林、太白両区を結ぶ宮沢橋のたもとで枝を広げるソメイヨシノ。地元の町内会が1959年5月、当時は皇太子の上皇陛下と美智子さまのご成婚を記念し、植樹したという。
 樹齢60年以上。花を咲かせる春はカメラを構える人たちでにぎわった。広瀬川に向かって葉を茂らせる夏は遊歩道を散策する人に緑陰をもたらした。地域のランドマークと呼んでもいい存在だった。
 橋の架け替え工事に伴い、桜のある場所に橋台を設置しなければならないという。街を彩る「色」がまた一つ消え、白っぽい風景が広がることに一抹の寂しさを感じる。
 移植が困難な場合に備え、市は接ぎ木により後継の木を育てているという。再び、地域の名所に育つことを願ってやまない。
 花の見納めとなったこの春は、改元のタイミングとも重なり、別れを惜しむ人たちが多くいた。散り際もまた、見事だった。
(報道部長代理 山野公寛)