駆け出しの頃、デスクと記者をつなぐのはポケベルだった。取材に向かう車の運転中にピーピー鳴り、慌てて公衆電話を探すこともしばしば。あまり遅くなると、じれたデスクの不機嫌な声を聞くことになる。

 今はどこにいても携帯電話。公衆電話を探したり、小銭を用意したりする必要はなくなった。ただ、いつでも電話できる状況とは限らないし、苦労がなくなったわけではない。

 青森の記者に原稿の問い合わせをした時はこんなことがあった。「間もなく高速バスに乗るところでした」。差し替えの原稿を乗車前に急いで送るという。締め切りも迫っており、頑張って書いてもらった。

 無事原稿が届いてしばらくすると「すみません、直したい所がもう1カ所ありました」と電話が来た。くぐもった小さな声。どこからかけているのか聞くと、「バスの中のトイレです」。お互い、ささやき合って原稿を直した。

 技術の進歩で情報のやりとりがどんどんスマートになるが、それも状況次第。問い合わせが必要なときは、記者が余裕を持って話せることを祈りながら受話器を取る。
(報道部次長 成田浩二)