災害と、音楽を通じた心の復興をテーマにしたシンポジウムが先月、東京であり、事前に紹介する記事を書いた。当日は行けなかったが、参加した同僚によると、全国から集まった音楽関係者らが熱心に意見を交わしたという。議論のベースになったのは仙台フィルハーモニー管弦楽団メンバーたちの奮闘の歩みだ。

 9年前の東日本大震災で深い傷を負った被災地を励まそうと、団員たちは発生直後から地元を支援するコンサートを開催。行方が見えない不安につぶされそうになる市民の心を、避難所や街頭など東北各地で癒やし続けてきた。

 当時、取材で「生きていくので精いっぱい。音楽なんて聴いていられない」という声も聞いた。だが、大半の被災者は涙をこらえながら耳を傾け、感謝を込めた拍手を送った。「あすへの希望が湧いた」と。

 音楽に限らず、美術や演劇など芸術は人に力を与えてくれる。3月がくるたびに、そのことを思い出す。

 今、国内外は新型コロナウイルスの感染拡大という災害に直面している。市民が音楽に触れ、心を癒やす場があればいいのだが…。
(生活文化部次長 菅ノ又治郎)