JR常磐線の全線開通に伴い、帰還困難区域だった大野駅(福島県大熊町)の周辺で避難指示が解除された。当分は住めないが、駅舎や周辺道路は立ち入りできるようになった。

 東京電力福島第1原発に程近いこの場所を初めて訪れたのが5年前。原発事故から4年がたっていた。当時、全町民が避難した町で防災パトロールをしていた「じじい部隊」と呼ばれた人々の取材だった。

 部隊は1年前に解散した。隊員は町OBら6人だった。帰還困難区域の中、彼らの軽トラックを追い掛けて取材した。話を聞き、「福島について何も分かっていなかった」と痛感したことを覚えている。

 先日、避難指示が解除された大野駅周辺を訪れ、ある水路に目が留まった。以前は葉っぱが詰まるため、隊員がよく取り除く作業をした場所だった。水がきれいに流れていた。わずかに復興が進んだと感じた。

 間もなく桜の季節を迎える。大熊町の名所は坂下ダム。避難した町民に古里を思い出してもらおうと、隊員が手入れをしてきた。今年も約500本が華やかに咲き誇るだろう。その頃にまた訪れたいと思った。
(論説委員 跡部裕史)