新型コロナウイルスの感染拡大で、書店では感染症関連書の売り上げが急伸している。専門家による啓発本やヘルスケア関連に交じって、疫病をテーマにした古典の名作にも注文が殺到しているらしい。

 フランスの作家、カミュが戦後間もなく発表した「ペスト」が話題になっている。「異邦人」と並ぶ不条理文学の金字塔だ。封鎖されて極限状況にある街で、ペストの脅威と闘う人々の姿が現代と重なると、書店で在庫切れが相次ぎ、出版社は急きょ増刷を決めた。

 われわれの世代には、故小松左京さんのSF長編で映画化もされた「復活の日」が特に印象深い一冊だ。生物兵器の新型ウイルスが全世界にまん延し、人類は壊滅状態に陥る。生存者はわずかに南極越冬隊員と航行中の原子力潜水艦乗組員…人類の危機が壮大なスケールで描かれる。

 週末は外出を控え、世界の名作を思う存分読むことにしようか。郊外の大型書店を回って書棚を確かめたところ、売り切れたのかどうか「ペスト」は見つからなかった。まあ、マスクやトイレットペーパーが在庫切れになることよりは、不条理な話ではない。
(生活文化部次長 新迫宏)