外勤記者は突然体内のスイッチが入り、走りだす瞬間がある。2月14日、大崎市鳴子地区の旅館業者らが宮城県による宿泊税の導入に反対する要望書を市議会に提出した時、そんな体験をした。

 正直に言うと、観光振興策の財源となる新税に反対する気持ちはなかった。1泊300円なら払ってもいいと思っていた。旅館経営者に話を伺ううち、自炊部屋に長期滞在する高齢者らにとって新税は痛手になることが分かった。

 「まず湯治客に会ってみなければ」。翌日、図書館に行って温泉街の下調べをし、取材への協力を求める文書を作った。16日から自炊部屋を持つ旅館を回り、常連のお客さんを次々に紹介してもらった。

 湯が煮えたぎる様子に引っ掛けて「湯治客ら不満沸々」と見出しの付いた記事を21日朝刊で掲載した。

 取材を通じ、県の観光担当者と業界側の関係が希薄だった実情が浮かび上がった。普段から対話して価値観を共有しておかなかったことが、今月3日の条例案取り下げに至った最大の要因ではないか。

 スイッチを押してくれた方々に感謝する。
(大崎総局長 喜田浩一)