時代を超えて愛される太宰治の作品の一つ「津軽」。総局の若手が、旅の足跡をたどって9回続きの連載に仕立てた。毎回さまざまなエピソードがちりばめられ、「第一読者」として興味深く読んだ。

 太宰が古里を旅したのは1944年5~6月。すでに敗戦濃厚の時期ではあるが、作品に戦争の暗い影は余り感じられない。配給の酒を集めさせ、ごちそうを食べ酔っぱらっている。

 ただ、海岸部の風景などは「軍事上」の秘密だとして描写は避けている。検閲官の目を本気で気にしているのか、忠義なる「優等生」を装っているのかは分からないが。

 新型コロナウイルスの感染者が先日、三沢市の米軍三沢基地で確認された。人数や濃厚接触者の状況などは非公表。安全保障上、支障があるからだという。外務省も、県や市に情報を得ても公表を控えるよう通知したという。

 同じ軍事組織でも、自衛隊の感染者は即座に公表される。米軍は聖域なのか。知る権利を侵しかねない「軍事上」の秘密。それが身近にあると改めて知ったと同時に、なんともふに落ちないものが残った。
(青森総局長 大友庸一)