小学校の校歌を口ずさむと、古里の海や山、恩師や友の顔を思い出す。記憶の扉を容易に開ける効果に驚く。歌は人の心を一つにするが、校歌は地域社会への帰属意識やアイデンティティーの形成にも大きく影響しているという。
 「在校中は歌わされる歌かもしれないけれども、卒業後は歌ってみたくなるのが校歌」。校歌に詳しい京都文教短大の宮島幸子非常勤講師は言う。
 145年の歴史を誇る石巻市大川小(児童29人)が24日に閉校式を行った。東日本大震災の津波で校舎が水没。児童108人中、74人が死亡・行方不明となり、教職員10人も亡くなった。
 閉校式で合唱した校歌「未来をひらく」は、仙台市出身の故富田博さん(2014年死去)が作詞、名取市出身の曽我道雄さん(88)が作曲した。
 校歌の結びは「われらこそ あたらしい 未来をひらく」。未来の新たな歌い手はなくとも、校歌は未来永劫(えいごう)、大川小卒業生の心を一つにつなぎ留めるはずだ。「校歌は一生のプレゼント」(宮島さん)なのだから。