画家・イラストレーターの古山拓さん(55)=仙台市青葉区=は、三陸の海の風景を長年描き続けてきた。潮風の中に点在する漁具や網。漁村の生活感が好きだった。
 7年前、東日本大震災が発生した時は、ちょうど仙台で個展を開く直前。開催を延期し、悩んだ末に数週間後、個展を開いた。絵を見た被災者からは「来てよかった」と言われた。それからも三陸の海を描き続けるつもりだった。
 しかし、震災後、海の前に立ってがくぜんとした。風景が変わってしまったからだ。防潮堤やかさ上げで整備された海辺。あの潮風と共に伝わる生活感は消えていた。「どうにも描けなくなってしまった」と、古山さんは告白する。
 今は青森県や日本海側の海を巡ることが多くなったという。被災した三陸の海について、「何百年かけてつくられた風景が、10年やそこらで戻るとは思えない」と複雑な思いで眺める。
 かつての海辺の光景を消し去った震災。画家たちが、復興していく風景に絵心を見いだす日はいつ来るのか。