江戸期の仙台藩は代々、能楽を振興した。『摺上(すりあげ)』は10代藩主伊達斉宗(なりむね)の命によって初演され、特にめでたい場で上演される秘曲だった。1589年、藩祖の政宗が会津黒川城主の芦名氏を滅ぼした摺上原の合戦を題材とする。
 舞台は古戦場に近い猪苗代湖畔。男が<七種(ななくさ)を一葉によせてつむ根芹(ねぜり)>と口ずさむと主人公の老人が現れ、その歌は政宗が周辺地を支配下に置いた喜びを表していると語る。老人こそ、政宗のいとこで文武に秀でた重臣伊達成実の化身。戦の経緯を勇ましい舞で再現する。
 『摺上』が来月22日、北海道伊達市で上演される。今年は成実の生誕450年。子孫に当たる亘理伊達家の当主らが明治期、北海道開拓に挑み、市の礎を築いた歴史を知ってもらうため企画された。
 全編が上演されるのは百数十年ぶりだ。成実を演じる喜多流能楽師の佐々木多門さん(45)は「仙台に息づく能の文化を受け継ぎたい」と意気込んでいる。宮城と伊達市の絆を象徴する演目。仙台市内の旅行会社は新幹線を利用した鑑賞ツアーも企画している。