落語の歳末ネタに「富久(とみきゅう)」がある。登場するのは、年の瀬の支払いに四苦八苦している久蔵さん。仕事は幇間(ほうかん)、つまり宴会を盛り上げる「たいこ持ち」。
 なけなしの金で富くじを買った。大当たりなら千両。今なら1億円にもなろうかという額で、住んでいる長屋の神棚にくじを納めていたが、火事に遭う。ところが何と、千両が当たっていた…。
 師走の仙台市の繁華街。21日まで売っている年末ジャンボ宝くじの売り場は、夢を買い求める人が集まる。胸を躍らせながら買うのはいつの世も同じだが、冷静に考えてみれば「多空(たから)くじ」と言いたくなるほどの当選確率。
 一番丁通の宝くじ売り場に並んでいた60代の男性は「みんなが平等に、豊かになれるような国ならいいのですが」。そうでないから夢を買いたくなる。
 久蔵さんの富くじは、近所の鳶(とび)職人の親方が神棚ごと持ち出して奇跡的に無事だった。「それはよかった、よかった」と聞く人はほっとひと安心。懐がどうにもならないなら、せめて心を温かく。庶民の思いは昔から大して変わらない。