だいぶ前に取材したのが縁で、秋田県南の小さな酒造会社から卓上カレンダーを毎年、送ってもらっている。蔵の内外を撮影した小ぶりの写真集を思わせるほのぼのとしたカレンダーだ。
 還暦を過ぎた杜氏(とうじ)さんの手紙がことしは添えてあって「生まれて初めて外国に行ってきました」と書いてある。行ったのは北京とパリ。どちらも仕事がらみ。北京では日本酒バー、パリではかなり有名なレストランを訪ねたそうだ。
 北京に日本酒バーがあるなんて当方も初めて知ったが、そのオープニングに呼ばれて行ったらしい。北京のバーでもパリのレストランでも、この酒造会社が手塩に掛けたお酒を提供している。
 この蔵、取材当時は今にも廃業しそうな規模の会社だった。けれども、若い社長を中心に、みんなやる気満々で仕事に励んでいたのが印象深かった。
 わが家近くの量販店でもこの蔵の酒は置いてあるので、正月、一升瓶を買い求めた。冬、すっぽりと雪に包まれる蔵が生む優しい味わい。海外進出を祝いながら、残らずおいしく飲ませてもらった。