ことしこそ日記を付けよう。そう決意したのに、1月半ばを過ぎて書けなかった日の方が多い。その日の出来事と思いを残しておきたいとは思うのだが、なかなか続かない。
 無精なのにそんな決意をしたのは、昨年暮れ、仙台市在住の作家佐伯一麦さんの著書『麦の日記帖(ちょう)』(プレスアート)を読み、触発されたから。東日本大震災を挟んで8年間、隔月刊の雑誌で連載した日記エッセーをまとめた一冊。
 自然や文学、美術など話題は多岐にわたるが、やはり震災に関わる記述に引き寄せられる。佐伯さんはがれきの風景を見て、画家松本竣介の絵を思い起こす。青い空を仰いで「その向こうには闇があり、死者に通じている」と感じる。
 阪神大震災や熊本地震にも触れ、旅先の浜松市では現地を襲った500年以上前の津波のことを記す。過去の災厄を振り返りながら、その上にある日々の営みを丹念に拾っている。
 ありふれた日常がいかに大切か、改めて思い知らされた。それをできるだけ日記に記録できればいいのだが…。