『奈々子に』という吉野弘さんの詩にこんな一節がある。<自分を愛することをやめるとき ひとは 他人を愛することをやめ 世界を見失ってしまう>
 スポーツ観戦に熱中しすぎて、われを忘れた経験は筆者にもある。決して「自分を愛することをやめた」わけではないにせよ、もっと自分を大切にし、他者への思いやりを持ってほしかった。
 東日本大震災から8年の節目を前に「復興応援試合」として10日に行われたサッカーJ1の仙台-神戸戦で、仙台サポーターの心ないヤジがネット上で問題になったという。
 仙台に在籍していた三田啓貴選手のファウルに激怒し、「くそったれ」というコールが繰り返されたと家人から聞いた。共に震災を乗り越えてきた両チームによる祈念試合だけに残念でならない。
 私たちは震災を機にスポーツの価値やスポーツができる喜びを学んだはずだった。成人式を詠んだ最近のこんな川柳がある。<被災地の二十歳は式で暴れない 東原佐津子>(毎日新聞『仲畑流万能川柳』)。大切なものを見失いたくない。