駅や施設でトイレを探すとき、男女の姿をかたどったマークが目印となる。人が外へ出て行く緑色の絵文字は、非常口だとすぐ分かる。ピクトグラムという。
 2020年東京五輪の競技を表すピクトグラム50種が発表された。これが導入されたのは、アジア初開催だった1964年の東京五輪。外国人に日本語は通じず、各国の言葉で案内板を掲げるスペースもない。大きな悩みだった。
 「一目で分かる絵文字にしよう」。共通言語として、競技や施設のピクトグラムが制作された。更衣室、サウナ、一時預かり、迷子…。何しろ、世界初の試み。数々の難問に若手の美術家たちが頭をひねってデザインを考えた。
 この仕事は社会に還元しないといけない-。美術家たちは全ての著作権を放棄し、トイレの絵文字はその後、国内はもとより世界中に広まった。
 外国人旅行客が増えている。言葉を用いず、情報を伝達できるピクトグラムは日本発の「おもてなし」の一つ。津波避難など防災にも役立つ。日常に溶け込んだ絵文字の価値を見直したい。