2月初め、「平川新さんの著書に和辻哲郎文化賞」という記事が小紙に載った。平川さんは宮城学院女子大の学長で日本近世史を専門とする。『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』は、閉鎖的で近代化を遅らせたとされる鎖国政策について新説を打ち出した。
 「豊臣秀吉の朝鮮出兵以来、欧州列強は日本の軍事動員力に驚き、東アジアに強国ありと植民地化を手控えた」との論旨である。「江戸幕府もひ弱ではなく、強い権力を背にオランダを一本釣りするなど、むしろ海外勢力をコントロールした」と大胆な着想だ。
 哲学者、和辻の『鎖国 日本の悲劇』は、自閉型とするステレオタイプの鎖国観を定着させた。その名を冠した賞を受賞し、平川さんは「真逆なことを書いた作品を評価してもらい、度量の大きさに感謝しています」とにこやかに話す。
 歴史の解釈は、時を経て研究が進むとともに変わっていく。近年、江戸期の政治や学問思想が再評価されている。固定観念にとらわれず、疑ってみよう。歴史探究の面白さがそこにある。