新時代「令和」の幕が開けて半月。改元フィーバーのさなか、東日本大震災の被災地を訪問された上皇ご夫妻を特集するテレビを見ていて、吉野弘さんの詩「『止』戯歌(ざれうた)」を思い出した。
 <「歩」は「止」と「少」から出来ています。歩く動作の中に 止まる動作が ほんの「少し」含まれています>
 被災者にゆっくりと歩み寄り、少し立ち止まる。避難所の床に膝を付け、優しく声を掛ける。涙ぐむ人、上気する人…。深々と頭を下げる年老いた被災者の姿が印象に残る。
 ご夫妻を待ち続けた被災者にとって、「ほんの少しの時間」だったかもしれない。しかし、ご夫妻との触れ合いは歩みだす確かな力になったはずだ。ニュースで接しただけの私たちの心も温まり、勇気づけられた。
 新しい時代に心が沸きたつ人がいる一方で、被災地には祝賀ムードとは縁遠い被災者も少なくない。苦難に直面している人のために少し立ち止まり、心を寄せたい。それが誰かの新たな歩みにつながると信じて。