ジー、ジリジリ、ジー、ジリジリ…。仙台市中心部の公園に行くと、アブラゼミが鳴いていた。耳をつんざくような大音量。近くを通る車の音もかき消す。

 セミの一生は短い。アブラゼミは6~7年ほどの地中生活の後、地上に出て数週間で一生を終えるとか。雄は雌にアピールするために鳴き、交尾後に死ぬ。雌は産卵で力を使い果たす。ただ、一生は短いが、セミの歴史は長い。約2億年前のセミの化石もあり、氷河時代は比較的温暖な場所で生き延びたと言われる。

 そんなセミは古くからさまざまな和歌や俳句、詩の題材になった。個人的に好きなのが、いわき市出身の詩人草野心平がヒグラシを詠んだ『天の声』。

 <五年間もじっとしていた。まっくらな土の中が。その故里(ふるさと)である筈(はず)なのに。カナカナ カナカナ。カナカナカナカナ。カナカナ カナカナカナ。まるで。天の声のコーラスである。>
 アブラゼミやミンミンゼミが加われば、オーケストラのような響きになるかもしれない。短い夏の名演に耳を傾ければ、奥深い音が聞こえてきそうだ。