年配の方は記憶に残っているのではないか。「サロン・ド・たわらや」。列島改造ブームに沸いた1970年代に仙台市青葉区国分町で一世を風靡(ふうび)した高級クラブ。五木寛之さんら文化人に愛され、政財界人や芸能人も足を運んだという。

 クラブを経営していた千葉勇作さん(89)の著書『国分町 花戦争( いくさ )』が出版され、石造りの洋館の写真に見入った。マホガニーの重厚な扉を開けると、19世紀末にパリで流行したアール・ヌーボー様式の、官能的で装飾に富んだ世界が広がる。千葉さんはパリを何度か訪れ、一流料理店「マキシム・ド・パリ」の空気を取り入れたと回想する。

 全盛期の客単価は2万円近かったが、不動産や土木建築の関係者で満席になったという。1万円札をばらまく大尽、黒板塀のある料亭の名前も登場し、往時の国分町を思い起こさせる。マダムを務めた最愛の妻が病魔に侵され、店は80年に閉店。千葉さんもがんを患ったが、日本画制作に打ち込み、病を乗り越えた。

 店同士が競い合った昭和の酒場物語「花戦争」。その薫りを十分味わった。