「うーん」。ある飲食店で日本酒を前に書家のAさん(68)が少し浮かない顔で腕組みした。口に合わなかったのかと尋ねると、「感心しないのは酒のラベルの文字です」と言う。

 吟醸酒の瓶には、有名な戦国武将にあやかった酒の名がいかめしい書体で表されている。「デザイナーがそれらしく作った字ですね。漢字の基本からは外れています」と口調は厳しい。

 「それを言うなら、私はこのメニューの文字が気になる」と、これは隣の席の書家Bさん(67)。お品書きには「カツオ刺し」「イカ焼き」など、おなじみの品々が毛筆風に記されている。

 「パソコン用のフォントで作成したもの。メニューは店の姿勢を表すものでしょう。もっと字を大切にしてほしい」。文字を扱う書家のまなざしとはこういうものかと感心させられた。

 あす、河北書道展が仙台市宮城野区のTFUギャラリーミニモリで始まる。一つ一つの文字に真剣に向き合った出品者の苦悩と鍛錬の軌跡を、ぜひ会場で感じてもらいたい。