能舞台とは、なんと退屈なものかと若い頃は思っていた。年とともに、重い装束で演じる静かな表現に悲しみ、喜びが秘められていると気付かされる。

 「仙台は能の本拠地でした」と話すのは、仙台市能楽振興協会の村上良信副会長(71)。藩制期、演じ手の人件費や能面などの調達に3万石が充てられた。小さな大名の年間予算に匹敵する。

 日本を代表する能楽研究者からは「仙台藩に残っていた文書記録のおかげで、当時の様子を知ることができ、不明な点を解明できた」と感謝され、地元の愛好家はまんざらでもない表情を見せる。

 なぜ、ここまで傾倒したのだろう。村上さんはそもそもの文芸好きのほか、江戸幕府との微妙な関係について指摘する。「いつ謀反を起こすかと警戒されていたのを、軍備ではなく能楽に散財することで、二心なしと安心させた」

 藩存続のための気遣い、深謀遠慮がこんなところにも。ファンは能楽堂の建設を切望してやまない。なるほど勾当台公園か西公園に能舞台があって、夏は薪能としゃれこむのもいい。