高校時代の恩師の家は、二つの大きな図書館から等距離にある。定年退職後、気分に任せて今日は東へ、明日は西へ。得意の数学書などを読むという。

 毎日、どうしているのだろう。仙台市内の市立図書館は、新型コロナウイルスの感染を回避しようと、本などの貸し出し休止の措置を拡大し、先週から全館休館となっている。

 無くしてみて価値の大きさを知るとは図書館のことと思うほど、嘆く人が多い。広い空間で換気できそうだし、会話も少ないのになぜ、との声もよく聞く。

 いまの風景を三つの言葉で表すと、人や物と接触しない「遮断」、家に閉じこもる「遮蔽(しゃへい)」、街からにぎわいの消えた「遮音」と呼んだら言い過ぎだろうか。戸締まりした図書館の前を歩いていて、言葉が浮かんだ。

 ある程度、制限されるのはやむを得ないとは思う。でも、好転の兆しが見られたら本を借り、少しの間、座って調べ物ぐらいはしたい。三つの「遮」をよそに置き、すうっと隙間風の吹くところから人の心に余裕も生まれる。