<人間が生きるためには、知ることが大切です。同じように、感ずることが大事です>。宮城県大和町出身の彫刻家、故佐藤忠良さんが三十数年前に「少年の美術」(現代美術社)に載せた一文だ。

 科学との違いを挙げ、美術を志す学生に学ぶ意味を説いた。詩や絵などの芸術が「感ずる心を育てる」と指摘し、知識と同じく、「感ずる心」もまた、生きていく上でとても大切なものだとつづっている。

 県美術館(仙台市青葉区)に併設された佐藤忠良記念館の静かな環境に引かれ、何度となく彫刻群を鑑賞した。専門の素養が無くても作品が時間を忘れさせてくれる。帰路は心が軽くなった気がした。

 新型コロナウイルスの影響は、市民生活の根幹を揺さぶる。経済活動への打撃のみならず、文化施設さえも軒並み休館を強いられる。重い気持ちを振り払おうにも外出もままならない。

 <ほんとうの喜び、悲しみ、怒りがどんなものかがわかる人間になってもらいたいのです>。冒頭の文章はこう続く。制約のある生活が続いても、人間らしい「感ずる心」まで細らせてはいけない。