「旬!!新じゃがいも1袋150円」。巣ごもり生活のさなか仙台朝市へ行ったら、青果店の値札が目に留まった。小ぶりだがコロコロして粒ぞろい。

 ふと「鳥の巣焼」という料理が頭に浮かんだ。「よくつぶして焼いて、まん中へ穴をあけて卵をポンと一つ落とし、半熟になったのを食べたら…」。食通で知られた作家池波正太郎さんの『食卓の情景』に書かれていた。

 さっそく家に帰って作ると、実にうまい。「む、これは」と鬼平犯科帳の長谷川平蔵を気取って食べたら、ついついお酒も進んでしまった。

 池波さんは5月3日が命日。ことしでちょうど30年になる。気取ったグルメではなく、仙台弁の「いやすこ(食いしん坊)」か。小説に出る食べ物はとりわけ豪華ではないが、みそ汁一つ取ってもしみじみとおいしそう。

 朝市にはタケノコやホヤも並んでいた。世の中は何かと不自由だが、豊かさを味わえないわけではない。「旬の味こそ人の世のささやかな贅沢(ぜいたく)」。池波さんならそう言って、励ましてくれるだろう。