「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」。樹木希林さんを起用した富士フイルムのCMを40年たつ今も鮮明に覚えている。

 コロナ禍について考えていたら、冒頭のCMを思い出した。フィルムは人間を、新型コロナウイルス感染症は人間性を映し出すからに他ならない。特に後者は人間の醜悪さを「それなり」以上に浮き彫りにする。

 インターネットの世界で感染者への差別や嫌がらせが横行し、実名をさらしたり、自宅を特定したりする人権侵害が起きている。最前線で見えない敵と闘っている医療従事者と、その家族も差別や偏見に苦しんでいると聞く。

 未知のウイルスは人々の心を蝕(むしば)み、人間の本性をあぶり出す。人類全体がさながら「コロナテスト」という名の共通試験を受けているかのようだ。

 治療薬として期待される「アビガン」は富士フイルム傘下の会社が開発した。効果が認められれば人々の恐怖も和らぐはずだが、特効薬抜きに差別や偏見を克服できないものか。