街を出てみよう。シンガー・ソングライターの吉田拓郎さんは1970年の作品『こうき心』で、こう呼び掛けた。その街が美しく緑に覆われた、心の古里だったとしても、と。

 そうしたいけれど、新型コロナウイルスが邪魔をする。宮城県の緊急事態宣言が解かれたからといっても、すぐに遠くへ出掛ける気になれない。週末は専ら近所のウオーキングである。

 新緑の季節、ウグイスの声が間近に聞こえる。通ったことのない道も歩いた。こんなにも自然が豊かだったかと再認識した。足を延ばした先にクマが出没したと後で知り、肝を冷やしたりもしたが。

 通勤に買い物、たまに旅行。いつもの生活が続いていれば、足元を見回すことなどなかったかもしれない。今は、そう前向きに考えるしかない。

 話をしてみよう、恋をしてみよう、涙を流してみよう、雨に打たれてみよう。拓郎さんは歌う。新しいことや知らないことを見たり聞いたりしたがるのは人間の本能。それをできなくするウイルスとは何と罪深いことか。