70年以上前に書かれたカミュの「ペスト」や、10年前に出版された高嶋哲夫さんの「首都感染」など、疫病との闘いを主題にした小説が売れているという。新型コロナウイルスの収束は遠い。不安の正体を探り、自分を支える言葉を本の中に見いだしたい人が多いのだろう。

 仙台市の作家伊坂幸太郎さんにもパンデミック(世界的大流行)を織り込んだ長編がある。「クジラアタマの王様」だ。

 「白い目で見られ、遠巻きにされ、平和を乱した諸悪の根源のような扱いをされる」-。終盤、新型ウイルスの脅威にさらされる主人公は、未知の病気そのものの恐怖に加え、世間がつくりだす偏見と差別の空気におののく。

 あれ? どこかで聞いたような気が。ページを繰るたび、私たちの現実社会と重なり合う描写にギクリとする。刊行は昨年7月。当時はコロナのコの字もなかった。まさに予言の書ではないか。

 書名は独特な姿形の大型鳥、ハシビロコウの学名を表す。炭鉱のカナリアなら身をていして目前の危機を知らせる。怪鳥が導く不条理風の物語、結末はいかに。