洋の東西を問わず使われてきた一筆書きの図形で五芒星(ごぼうせい)がある。古代日本でも魔よけや守護の印とされ、平安時代の陰陽師(おんみょうじ)、安倍(あべの)晴明(せいめい)は呪符などにこの文様をよく用いたという▼フィギュアスケートの羽生結弦選手(23)である。平昌五輪で王者の座を明け渡さなかった。きのう、フリーの曲『SEIMEI』で背中の刺しゅう五芒星が輝いた。金色。衣装作りの際、銀の糸も用意されながら迷わず金を選んだ。演技は攻める気持ちから4本の4回転ジャンプに挑み、3本は軽やかに成功してみせた▼決して占いに凝っているわけではない。手足の動きはもちろん、日本の伝統を衣装でも包み隠さず見せたかった。「外から見た日本の素晴らしさに注目した」(『王者のメソッド』野口美恵著)からである▼振り返れば、安倍晴明とダブるような天と地と語り合う競技人生を送っている。16歳の時に東日本大震災に遭い、仙台の練習リンクが閉鎖された。天変地異を恨み、その後は著書で得た印税を施設に寄付し続ける。大会があれば「僕の演技で被災地を元気づける」との使命感を心に刻む▼66年ぶりの五輪連覇。とはいえ、今後、銀メダルの宇野昌磨選手(20)ら若手が「打倒羽生」に燃えてくる。追われる王者は何を思うか。天と地と、氷が知っている。(2018.2.18)