『書を捨てよ、町へ出よう』。弘前市出身の劇作家寺山修司が1967年に出した本だ。題名が安保闘争など騒然たる時代に「知識の人になるな。実体験をせよ」とのげきに響き、無数の若者が読んだ▼その10年後から全国大学生協連が大学生の読書時間を調べた。77年に「ほとんどなし」はほぼ8人に1人。当時、大学生だった筆者も「本を読まないのは恥ずかしい」と言われた。2004年から別の細かな内容で読書時間の調査を始め、昨年初めて「1日にゼロ」が50%を超えた▼奨学金返済などのアルバイトに忙しい事情もあるそうだ。大学紛争で休講続きの60~70年代と違い、今は授業やゼミの出席も厳しく、余裕がないのは確か。もちろん読書をするという大学生も多く、「二極化」しつつあるという指摘も▼四六時中スマートフォンをいじる若者イメージがあるが、大学生協連の同じ調査で1日の利用は平均3時間弱。大半が「ニュースをみる」と答え、雇用や景気、年金への関心も高い。限られた時間で現実的な情報を得ている▼では、本を読む意味は? 拙い経験だが、時空を超えて人の悩みや運命や決断、恋まで追体験できる。人の強さ弱さ、偉さが分かり、見える世界も自分も変わる。こんな心強い先輩はない。書を探し、町に出てみては。(2018.2.28)