「水の都」と称されるイタリアのベネチアは、高い装飾性を誇るベネチアングラスの産地でもある。13世紀に始まったとされ、主にムラーノという島で作られてきた。職人を移住させ、技術の流出を防ごうとしたためだという▼名工の一人に、ジュゼッペ・バロビエール(1853~1942年)がいる。彼が1895年に発表した高さ20センチほどのワイングラスは、ステム(脚)がらせん状のユニークなもの。風が吹いただけで揺れたという逸話が残る▼ステムはミリ単位の細さ。あまりに繊細なことから不可能と言われた作品の復元に、ガラス作家で秋田公立美術大教授の小牟禮尊人(こむれたかひと)さんが昨年挑んだ。NHKのテレビ番組の企画だった▼カップ、ステム、フット(底)に分けて制作後、くっつけることにした。ステムのらせんは金属の棒に巻き付けて作り、カップは軽量化のため極限まで薄くした。うまくいったと思ったら、割れる。試行錯誤を重ねた末に、見事成功した▼ガラス作家の技術の粋を集めた作品は、小牟禮さんが工房リーダーを務める秋田市新屋ガラス工房で見ることができる。ガラスケースに収められているため、実際に風にそよぐことはない。それでも、わずかな振動でも揺れだしそうで、見ていて飽きない。展示は今月18日まで。(2018.3.5)