フォークシンガー友川カズキさん(68)は自作の歌『一人ぼっちは絵描きになる』に、こんな詞を書いた。♪確かなものなぞ何ひとつない/人とて詮(せん)ない肉片なり…。真実を探しても答えがなく、信頼できる人とていない。そう読める▼ファンは「うそ」だと知っている。ライブで度々「体の細胞はバスケットボールの形をしている」「人生の立ち上がりはバスケだった」と明かしているではないか。母校能代工高(秋田)では一生の師も得た。決して一人ぼっちの肉片ではない▼確かなもの? 授けた人こそ加藤広志さん(80)であった。友川さんの著書によると、<指の先まで神経を尖(とが)らせてスックと立っている>監督で、<巨大な他者であり社会>だったという。以来、師の「血の気」が自身の思考と行動の道しるべとなる▼全国優勝33回。訃報に接し、あらためて途方もない戦績をかみしめる。「しっかりした理論で力を引き出せる指導者がいれば強くなる」との信念は固かった。コートを全面に使い、相手の球出しから激しいプレスを仕掛けていく戦術は日本代表でも用いられた▼かつての「東洋一の木都」はいま「バスケの聖地」になった。JR能代駅にはリングが設けられ、乗客たちを出迎える。教え子どころか地域に魂を宿らせた人でもあった。(2018.3.7)