「こんなに長く水揚げできないのは初めて」。ホタテを養殖している石巻市の知人の漁業者が言う。今年の水揚げを始めていたはずの3月下旬から出荷の自主規制が続く。国の基準値をはるかに上回る貝毒が発生して収まらない▼行楽や祭りでホタテが売れる大型連休の時期を逃し、「次の需要期である、お盆までに出荷できないとつらい」。東日本大震災を乗り越えた被災地の漁業者たちが、またも背負う試練だ▼貝毒による出荷の自主規制は、宮城県の牡鹿半島東部から岩手県南部の沿岸に広がる。宮城では昨年、養殖中のへい死や変形が多く発生して不漁だったが、同じ4月の時点の水揚げを比べて今年は94%減だという。「廃業を検討せざるを得ない」との声が本紙に載った▼原因は有毒なプランクトン。ホタテに食べられ、蓄積されて貝毒になる。水温上昇などで増殖するが、貝毒発生は震災後に各地で頻発、長期化している。それまで少なかった「まひ性」の貝毒も増えたという▼「津波で海底の砂や土が巻き上げられ、休眠していたプランクトンの種(胞子)がまん延した」と水産資源生態学の片山知史東北大大学院教授はみる。津波による環境の変化も一因なのだろう。海の中では対策も非常に難しい。養殖に懸ける漁業者の苦悩は続くのか。(2018.6.8)