世界的な細菌学者である野口英世の母親シカさんの手紙は日本で最も有名な手紙の一つだろう。「おまイのしせ(出世)にわ みなたまけました わたくしもよろこんでをりまする」と成功を祝福。しばらく日本に帰っていない息子に「はやくきてくたされ」と繰り返しつづった▼息子に会いたい一心だった。幼い頃に覚えた字を思い出しながら懸命に書いた。望郷の念を募らせた英世は帰国し、親子は再会を果たす▼東京都目黒区の船戸結愛ちゃん(5)の虐待死事件では、結愛ちゃんがノートに書いた必死の願いがかなわなかった。「パパとママにいわれなくても じぶんからきょうよりかあしたはもっとできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」。覚えたての平仮名が並んでいた▼毎朝午前4時に起きて平仮名の練習をするように命じられた。朝はスープ1杯、昼と夜はみそ汁をかけた少しのご飯で、体重はわずか12キロ。顔や体にはあざ。シャワーで水を掛けられ、冬はベランダに放置された。逮捕された親が人の皮をかぶった鬼に見える▼児童虐待の報道が後を絶たない。今もどこかで子どもが泣いているかもしれない。結愛ちゃんの死がこれ以上の虐待を止めるきっかけにならないかと切に願う。(2018.6.9)